調停から訴訟に進んだ数は、なぜないのか
民事調停がまとまらなかった(不成立)あと、何件が訴訟に進んだかは、国の統計にありません。 国の統計は、調停と訴訟を別々に数えていて、同じ事件をまたいで追いかけていないためです。 流れの図で、不成立から訴訟への線を点線にしているのはそのためです。
数えられない理由
- 訴えない人も多い。不成立のあと、あきらめたり、当事者どうしで話をつけたりします。
- 訴える先が分かれる。請求の額で、簡易裁判所(140万円まで。少額訴訟は60万円まで)か地方裁判所に分かれます。
- 訴訟の統計は、来た道を分けていない。訴訟の数は事件の種類ごとで、調停を通ってきたものと、調停を通らずに訴えたものが混ざっています。たとえば建物の訴訟は、家賃を払わない人の明渡しが多く、そもそも調停を通っていません。
- 調停を先にする決まりが、ほとんどない。家賃の増減の争いだけは調停を先にする決まりがあります(民事調停法24条の2)が、訴訟の統計は家賃の増減を分けて数えていません。
数えられているのは、ここまで(令和7年・簡易裁判所)
| 調停の種類 | 終わった数 | 不成立 |
|---|---|---|
| 宅地建物 | 4,342件 | 1,987件(46%) |
| 一般 | 15,559件 | 4,462件(29%) |
| 商事 | 3,071件 | 867件(28%) |
| 交通 | 947件 | 336件(35%) |
不成立のあと、このうち何件が訴訟に進んだかは数えられていません。
逆向きの道(訴えたあと、裁判所が事件を調停に回す「付調停」)は、地方裁判所の民事調停 4,333件(令和7年に終わった数)が上限の目安です。付調停だけの数は出ていません。
事件の区分ごとの違い
不成立のあとどうなるか、そして次の手続きへの数があるかは、事件の区分で違います。 民事調停は、どの区分でも、不成立の知らせから2週間以内に訴えれば、調停の申立ての時に訴えたことになり、納めた手数料も訴訟に引き継げます(民事調停法19条)。
宅地建物の調停(敷金・家賃・明渡しなど)数がない
令和7年:簡裁で終わった4,342件のうち、不成立1,987件(46%)
- 不成立のあと
- 訴えるかどうかを決める。家賃の増減の争いだけは、調停を先にしないと訴えられない(民事調停法24条の2)
- 次の手続きへの数
- ない。訴訟の統計は、調停を通ってきたものを分けていない。家賃の増減の訴訟も分けて数えていない
一般の調停(お金の貸し借り・近所の争いなど)数がない
令和7年:簡裁で終わった15,559件のうち、不成立4,462件(29%)
- 不成立のあと
- 訴えるかどうかを決める。調停を先にする決まりはない
- 次の手続きへの数
- ない
商事の調停(会社どうしの取引など)数がない
令和7年:簡裁で終わった3,071件のうち、不成立867件(28%)
- 不成立のあと
- 訴えるかどうかを決める。調停を先にする決まりはない
- 次の手続きへの数
- ない
交通の調停(交通事故の損害賠償)数がない
令和7年:簡裁で終わった947件のうち、不成立336件(35%)
- 不成立のあと
- 訴えるか、ほかの話し合いの場(交通事故の紛争処理の機関など)を使うかを決める
- 次の手続きへの数
- ない
特定調停(借金の返し方の整理)訴訟には進まない
令和7年:簡裁で終わった1,663件のうち、不成立118件(7%)
- 不成立のあと
- 訴訟ではなく、破産・個人再生・任意整理などに進むことが多い。流れの図の民事調停からは除いている
- 次の手続きへの数
- ない
知財調停(東京地裁・大阪地裁)割合だけ
公表の割合:不成立 16%(令和元年10月〜令和6年4月末)
- 不成立のあと
- 2週間以内に訴えれば、手数料を訴訟に引き継げる。調停を担当した裁判官は、その訴訟を担当しないのが原則
- 次の手続きへの数
- 終わり方の割合は公表されているが、訴訟に進んだ数はない
離婚の調停(家庭裁判所)推計できる
離婚の訴訟 7,772件(令和7年)
- 不成立のあと
- 訴えるかどうかを決める。離婚は調停を先にしないと訴えられない(調停前置。家事事件手続法257条)
- 次の手続きへの数
- 離婚の訴訟は、ほぼ調停を通ってきたものと見なせるので、推計できる
遺産分割・養育費・婚姻費用などの調停(家庭裁判所)自動で審判へ
- 不成立のあと
- 訴えるのではなく、自動で審判(裁判官が決める手続)に移る(家事事件手続法272条4項)
- 次の手続きへの数
- 分かれ道がないので、不成立はそのまま審判に進む
労働審判(地方裁判所)数がある
審判に異議が出たのは 53.8%(令和6年)
- 不成立のあと
- 審判に異議が出ると、自動で訴訟に移る(労働審判法22条)
- 次の手続きへの数
- ある。迅速化の報告書が数えている
あなたの事件では
不成立のあとに訴えるかどうかは、請求の額・証拠・かかる期間と費用で変わります。あなたの弁護士と相談して決めてください。
出典:最高裁判所「司法統計年報(民事・行政編)」令和7年 第78表(簡裁の民事調停)・第84表(地裁の民事調停)・第19表(地裁の第一審)、 「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」表15、最高裁判所「人事訴訟事件の概況(令和7年1月〜12月)」。